2013年11月25日月曜日

窓(乃南アサ)



聴覚障害をもつ高校生の女の子を主人公とした、ミステリー。どうやら「鍵」という本の続編らしいが、前作を読んでいなくても問題なくすんなりと楽しめた。主人公と同じく聴覚障害をもつ男の子が巻き込まれた毒入りジュース事件。心に闇をもつ少年。ミステリーとして物語自体も飽きることなく楽しめたが、この作者の表現力の深さに感嘆した。ひきこもり、鬱憤をためる少年の心に響く、カチカチという音。聴覚障害により周りに完全には溶け込めない、少女の苛立ち、やるせなさ。それでいて素直で明るい彼女の心の動き。まるで狙われているのが彼女の兄であるかのように読者を思いこませる文章のトリック。事件自体は残酷で非合理な事件を描いているのに、読後はなぜか、主人公の少女の瑞々しい若さや彼女の初恋の希望が残る。圧倒されるようなトリックはないが、ミステリーとして気軽に楽しめ、かつ読後感のいい、なかなかお得な本だった。


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2013年11月14日木曜日

世界に誇る日本のAV?

出張で中国に行くことがある。しかも、北京や上海のような大都市ではなく、観光客は絶対行かないような地方都市や農村に赴く。しかしどんな場所に行っても必ず目につき、しかも日本ではほとんどお目にかからないものがある。「男科」「女科」「治不孕不育」などと書かれた生殖医療の広告だ。単に私の目がそうしたものに行きやすい、ということではないはずだ。とにかく、どの都市でも、農村でも違う病院の名前と一緒にそうした広告があちこちの目立つところにあるのだ。そうした広告はあまり見かけない日本とは大きな違いだ。

日本では性に関することは下品と思われてて、男女の性に関する医療も、あんまり大っぴらに宣伝しないんだ、と中国人の同僚に言うと、「えー、日本って性に関してはすごい開放的なんだと思ってた。だって、日本のAVって、すごい人気なんだよ」という答えが返ってきた。確かにアジアの中では日本の貞操観念の低さは有名だ。今時、つきあってセックスするのは当たり前のようになっているし、結婚まで貞操を守る人の方が珍しいだろう。
海外でも、日本女性の軽さは有名だ。バリのホテルで働いたことのある人から、新婚旅行で来た日本女性でも、夫の休んでいる間に気軽に誘いに乗る、という話を聞いたことがあるし、以前スリランカを1人で旅した時には、会ったばかりのガイドに、日本女性の貞操観念について説教された。私も男を漁りにきたと思われたのだろうか。全く心外だ。

閑話休題。日本の性文化は中国でもその名を轟かせている。中国語で写真「日本のAV女優の、蒼井そらなんて、「苍老师(先生の意味)」って呼ばれてて、すごい人気なんだから!」私は初め蒼井そらの名前が分からず(何しろ発音が全然違う)、彼女は携帯を使って私に字を見せてくれたのだが、苍(蒼)の一字を入れただけで、自動変換機能で蒼井そら(苍井空)が第一候補に上がってきた。携帯の自動変換機能で名前が真っ先にあがるAV女優蒼井そら。その人気の程や恐るべし。因みに私の同僚はアラサーの既婚女性で普段AVにお世話になっているとは思われない。

「確かにAVは人気で、日本は性に関しては開放的だけど、でも一方でやっぱり下品で恥ずかしいことって考える伝統もあるの。AV女優だって、人気はあってもやっぱり尊敬される職業じゃないし、引退してももし周りの人に知られたら、軽蔑されるよ」と説明すると、私の同僚はさも驚いて、「そうなの?日本ではAVって国を代表する芸術の一種って見られてて、AV女優はみんな誇りを持ってやってるんだと思ってたよ。」と言った。AV女優をどう見るかに関してはいろいろ意見がありそうだが、性に携わる職業というのは古今東西あまり尊敬されることはないだろう。中国人だって、やっぱりAV女優を下に見るでしょ、と言うと、「そんなことないよ!男はみんな崇拝してるよ。軽蔑なんてとんでもない!」

本当だろうか。多分AVを見たこともないであろう30歳の中国人の既婚女性の意見がどれほど標準的なものかは定かではないし、私の意見が日本を代表するものではないこともわかっているが、ポルノを高尚なものとして見る文化なんてあるのだろうか?

そういえば、2009年インドネシアに来たばかりの時、よく「ミヤビって知ってる?」と聞かれた。全然知らなかった。そんなタレントいたっけ?と思ったら、AV女優だった。日本では小澤マリアという名前だが、こちらではミヤビという名で売っている。当時、インドネシアに撮影に来ていて、随分話題になっていたのだった。確かに彼女はインドネシア人好みの、彫りが深くてエキゾチックな顔をしている。
しかし、本当によく聞かれた。そして、知らないと答えたらみな驚くのだ。若い女性に普通、AV女優の話などするだろうか。歴としたセクハラじゃないか。それに、若い女がポルノに詳しかったらそちらの方が変だと思うのだが。
「ポルノなんてとバカにするな。ミヤビのビデオはロマンチックで素晴らしいんだから!」そう熱っぽく語っていたインドネシア人の男たち。いや、AVの素晴らしさを私に力説されましても。

中国の蒼井そらにインドネシアの小澤マリア。日本人が好む、好まざるに関わらず、日本のAVはアニメ以上に日本の文化を代表するものとしてアジアで親しまれている。海外で一番知られている日本人は、くるくる変わる総理大臣ではなく、実は彼女たちなのではないだろうか。

2013年11月13日水曜日

おかしな日本語発見!



先週、久しぶりに海外出張があり、初めて出来たばかりの新しいバリの空港の国際ターミナルを利用した。すでに友人たちから色々微妙な感想を聞いていたが、やはりどうも使い勝手があまりいいとはいえず、少々失望した。しかし、搭乗口で面白いものを目にした。以下がその写真だ。多少小さくて見にくいかもしれないが、英語のHAVE A SAFE JOURNEYの下の、「安全な旅を持っている」がご覧いただけるだろうか。

翻訳者を使わず、グーグル翻訳をそのまま使ったのだろうか。インドネシア語のSelmat Jalanが正しいのは当たり前だが、中国語と日本語に笑い転げてしまった。中国語も日本語と同様、英語の直訳となっている。自然な中国語なら、祝你旅途愉快というところだろう。別にこんなのは珍しいことではない。むしろ、インドネシアの空港でまともな日本語を見かけるほうが珍しい。インドネシアの日本語表示は日本人への案内というよりも、完全にうけ狙いとしか思えない。バリに限らず、ジャカルタの空港でもかなり楽しいことになっている。

おかしな日本語は別に空港に限らない。日本のものは安全で質が高く、おしゃれと、国際的にも評価は高い。そこで、日本のものに似せようと、でたらめの日本語を書いた商品はたくさんある。そのいくつかをここでご紹介しよう。
スーパーで見つけた台湾製の大福もち。台湾では日本がとても人気で、いろいろな商品に日本語を使いたがる。でも、これって何て読むの?それに、注目は右上の、「濃厚でマンゴー味わい」ブドウ味なのに・・・。これのとなりにあったマンゴー味の大福は、これで良かったんだけどね。

お次はハードウェアショップから。

既に意味のある日本語を書こうという意思さえ見られない・・・。とりあえず日本の文字を放っておけばそれなりに見えるだろう、ってことなのか。これに騙されて日本製だと思って買う人はいるのだろうか・・・。

でも、日本人も実は笑えない。実は日本人が気付かないだけで、日本にもおかしな英語があふれている。外国人の失笑を買っていること間違いなし!これを見て彼らの気持ちをわかってあげよう。

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2013年11月2日土曜日

スローグッドバイ(石田衣良)



20代の男女の恋愛を描いた短編集。どこかの街角で起こっていそうな恋愛物語の一場面を切り取った、そんな感じだ。ひどくありきたりのようで、ひとつひとつが特別、そんな恋愛。皆出会いがあり、喜びがあり、悩みがあり、別れがある。石田衣良の恋愛作品では、「美丘」を読んだが、こちらのほうが、普通っぽいが、わざとらしさがなくて自然でいい。

その中でも好きだったのが、ローマンホリデイという話。「わたしと『ローマの休日』をしませんか?」という書き込みに始まったインターネットでのやりとり。メール相手のやさしい気づかいに魅かれて、会うことを希望すると、相手は孫娘の名前を使っていた、72歳の寝たきりのおばあさんだった・・・。

この短編集の作品は、どれもあたたかい。現実の恋愛はもっとシビアなような気がするが、やはり短編では、後味がよいものがいい。やっぱり人に恋するというのは素敵だ、と思わせてくれるような短編集だった。

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