2013年11月25日月曜日

窓(乃南アサ)



聴覚障害をもつ高校生の女の子を主人公とした、ミステリー。どうやら「鍵」という本の続編らしいが、前作を読んでいなくても問題なくすんなりと楽しめた。主人公と同じく聴覚障害をもつ男の子が巻き込まれた毒入りジュース事件。心に闇をもつ少年。ミステリーとして物語自体も飽きることなく楽しめたが、この作者の表現力の深さに感嘆した。ひきこもり、鬱憤をためる少年の心に響く、カチカチという音。聴覚障害により周りに完全には溶け込めない、少女の苛立ち、やるせなさ。それでいて素直で明るい彼女の心の動き。まるで狙われているのが彼女の兄であるかのように読者を思いこませる文章のトリック。事件自体は残酷で非合理な事件を描いているのに、読後はなぜか、主人公の少女の瑞々しい若さや彼女の初恋の希望が残る。圧倒されるようなトリックはないが、ミステリーとして気軽に楽しめ、かつ読後感のいい、なかなかお得な本だった。


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