2013年6月16日日曜日

父の日



今日は6月の第3日曜日、父の日だ。ここ数年、父の日が来るたびに思い出すことがある。

それは、5年前の父の日の翌日のことだ。その日、私は研究室で同級生と顔を合わせた。そして、彼女は私にこう尋ねた。
「昨日はお父さんに電話した?」
は?私にとって、こんなに突拍子もない質問もなかった。宇宙人に会ったかと聞かれたほうがまだ驚かなかったかもしれない。聞き間違えたのだと思った。しかし、彼女は全く同じ質問を繰り返した。

父親?私がこの人に父親のことを話したことなんてあっただろうか。私の父はとうに他界していた。しかしなぜ電話?私と誰かを間違えているのだろうか。さっぱり訳がわからず、パニック状態に陥ってしまった私に、彼女は不思議そうに言った。
「だって、昨日は父の日でしょ?」
その一言で全て合点がいった。そして私は、ひとしきり大笑いした。一体何があったのか、彼女が怪しむほどに。普通の質問にあまりにも戸惑った自分が可笑しかったし、父の日という存在をはなから忘れ去っていた自分に気づいたのだ。

そういえば、と思い出した。確かに、確かに家の近くの商店の窓には、父の日キャンペーンの宣伝があった。そして、それが確かに目の端に入っていたのに、意識にまで全く上らなかったことに気づいた。そして、それまで10年間、父の日が私とは関係ないものになってからずっとそんな調子だった。10年の間で始めて、父の日の存在というものをはっきり認めたのがその日だったのだ。

人間は、自分の興味のないもの、関係ないものは見えなくなるという。まさにそれだった。そして帰りに改めてみて見れば、どこもかしこも父の日キャンペーン中なのだ。この景色を毎日見ていて父の日に気づかないとは、関係ないもの、都合の悪いものをフィルターしていた私の無意識に恐れ入った。

父の日の存在を再認識してから、5回目の父の日が来た。別に父がいないからって、関係ないこともないだろう。母の日は、アメリカの少女が亡き母を偲んで白いカーネーションを贈ったのが始まりという。私だって父を偲ぶかたちで祝ってもいいのだ。

だいぶ前に、父のことを歌った歌を作った。もともと父のことを歌うつもりなんて全くなかったのだが、メロディーができ、歌詞に難儀していたところ、驚くほどぴったりあったのだ。自分でも結構気に入っている曲だ。下手でお恥ずかしいが、もしよろしければ、ご試聴あれ。


2013年6月14日金曜日

領収書なしで経費が落ちる???



日本の企業で働いている方でこの記事を読んでいる人がいらしたら、是非教えていただきたい。出張などに行ったとき、レシートや領収書などの支払いを証明するものなしに、経費で精算することができるのだろうか。バスや地下鉄などの、領収書が出ないようなものならまだわかる。しかし、それが食費だったりしたら、どうだろう。

実は、レシートの有無をめぐって、今日ひと悶着あった。部下が提出した出張費の経費精算書についてきた領収書が、全部自分が用意したものだったのだ。自分の署名入りである。本来のレシートは全て失くした、ということだった。内容は、タクシーなどの交通費もあれば、食費もある。申請した金額と内容は、決して常軌を逸したものではなかったが、それでも、たくさんの支払いの額を足せば、ある程度の金額にはなる。私は受け入れられない、と思った。自分で用意し、署名した領収書なんてなんの証拠にもならない。そんなもの経費が処理できるほど世の中甘くない、と思っていた。レシートを失くしたのも、自分の責任なのだから。

しかし、総務に見せられた社内規則には、「25米ドル以上の経費の支払いには、レシート(領収書)を必要とする」とあった。私はショックを受けた。何、これって逆に言えば25ドル以下のものなら領収書なしでも経費が落ちるってこと?総務は、「領収書をなくしたりしても、内容が妥当であれば申告さえすれば大丈夫だよ」と。

この規則は、我が社の本部、アメリカで作成されたものだと思われる。しかし、アメリカの25ドルとインドネシアの25ドルは全然違う。例えば、ニューヨークだったら、ちょっとしたレストランでディナーを食べればすぐ25ドルになってしまうだろう。しかし、ここインドネシアでは2,3ドルで一食が足りる。25ドルは、結構な高額だ。それでも、レシートなどの支払いの証明なしに、経費が落ちるのだ。出張中の出費も、ひとつひとつが25ドルを超えることはあまりない。つまり、25ドル未満の支払いにレシートを必要としないのだったら、出張中のレシートを精算用にとっておく必要は全くなくなる。こんな馬鹿げたことってあるだろうか。

私だって、しょっちゅう出張をしている。時には1つや2つ、レシートを頼むのを忘れたり、失くすこともある。支払いが明らかな場合を除いて(たとえば空港の使用税など)、そんなレシートなしの経費請求はしたことはない。自分の不注意が悪いのだし、金額もどうせひとつひとつは大したことはない。食費なんて、出張に行かなかったら自分で払っているべきものなのだから。そして、それが当たり前だと思っていた。

それを言うと、総務は驚いて言った。「えー、何で請求しないの?レシート失くしても、メモしておけば、後で自分の申告で申請できるのに。」インドネシア人の部下は当たり前のようにうなずく。自己申告の経費に疑問を唱えた私は、どうやら余程のケチと思われたのかもしれない。話のわからない外国人だ、とも。

レシートがなくても通る経費精算。これは、ある意味職員にやさしいルールと言えるだろう。しかし、これでいいのだろうか?いくらでも金額をごまかしようがあるし、使ってもいない経費を申請することだって簡単だ。レシートをひとつひとつ保存し、まめに経費請求書を書いている人間が馬鹿みたいではないか。レシートを紛失したときに、私だって助かるのだから、喜ぶべきなのかもしれないが、自分の真面目さを馬鹿にされているような気がして、未だにこの規則に納得がいかない。

日本の企業で働く方々、いや、日本に限らず他の国でも、企業の経費精算ルールはどうなっているのか。もしよければ、是非教えていただきたい。
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2013年6月13日木曜日

トーストマスターズを知っていますか?



トーストマスターズというクラブをご存知だろうか。断っておくが、トースターのブランドではない。(実際にあるらしいが)。朝食クラブでもない。トーストマスターズは国際的な、非営利法人で、自由にパブリック・スピーキング(大勢の人前で話すこと)のスキルを磨くことのできるところだ。世界中にクラブがあり、会員同士がボランティアで助け合い、励ましあい、批評しあいながら自分のスキルを伸ばしていく。クラブに加わって約3年になるが、今では私のバリの社会生活で欠かせないものとなっているので、是非ここで紹介したい。

もともと私がトーストマスターズに加わったのは、仕事上、どうしても他の人の前で発表することが多く、しかしそれがうまくできずに悩んでいたためだった。何とかして人前でうまく話せるようになれないものかと、本を読んで勉強していたところ、空港で声をかけられたのだ。「トーストマスターズって知ってる?」と。人前でうまく話ができるようになるには、練習を積むしかない、本を読んだだけではだめだとはじめからわかりきっていたので、そんな練習をさせてくれる場所があると聞き、飛びついた。早速インターネットでトーストマスターズ・インターナショナルのページを開き、バリにあるクラブを探し、クラブを見学、そして入会。そして早3年近くになる。

クラブでは準備スピーチと、その批評スピーチ、それに即興スピーチセッションがあり、準備スピーチでは与えられた課題(例えば、スピーチの構成、ボディ・ランゲージや、声のめりはりなど)にそってスピーチを準備し、人前で発表する。準備スピーチには必ず決められた批評者がいて、そのスピーチで良かったところ、改善点やアドバイスなどを教えてくれる。批評スピーチで自分のスピーチのよかったところを人前でほめられると、やはり嬉しいものだ。即興スピーチは、いきなり与えられたトピックについて1~2分話すというもの。これは、仕事などでいきなり意見を求められたりしたときの対策にもなるし、会話術を磨くことにもつながるので、とても実益がある。他の会員のスピーチを聞くのも面白く、勉強にもなるので、まさに一石二鳥。日本でもたくさんクラブがあるようだが、バリにも4つある。

トーストマスターズで定期的に人前で話をすることに慣れると、前のようにあがらなくなった。そして、自信がついたせいか、人と話すのが前ほど苦痛ではなくなり、社交的になったように思う。そして、何よりうれしいのは、クラブを通して友達が増えたこと!さすがにバリは国際的で、クラブを通して知り合った友達は、インドネシア人のほかにカナダ人、オランダ人、タイ人、ニュージーランド人、ドイツ人と国際的で、職業も様々。医者や弁護士、金融関係の人からプロの写真家、観光関係、実業家、主婦にプロのダンサーと、仕事では絶対に出会えなかったような業種の人ともここで知り合うことができる。ついでにここで誰かいい人見つからないかなあ・・・という不純な希望はまだ満たされていないが、まずまず充実した日々を送っている。

さらに楽しいのは、出張した際に、別のクラブを訪ねられること。今までに、出張中にクアラ・ルンプール、香港、シンガポール、東京、ニューヨークで別のクラブを訪ねた。どこでもバリから来たというと歓迎してくれ、現地の人とすぐに知り合いになれる。
クラブのスピーチは全て英語のせいか、バリで日本人の会員は私1人。バリにはたくさん日本人が住んでいるのだから、もっと誰か来てくれないかなあ・・・とも思うのだけど。もし興味があったら、是非のぞいて見てほしい。もちろん、人前で話すのが苦手な人、プレゼンに悩んでいる人には、是非お勧め。短期間のコースをとるより余程楽しく、効果があり、しかも安い!

日本でのトーストマスターについての詳細:http://www.district76.org/ja/ 
トーストマスターズ・インターナショナルについての詳細(英語):http://www.toastmasters.org/ 
一般的な情報については、トーストマスターズ・インターナショナルのウィキペディアページへどうぞ。
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2013年6月9日日曜日

バリの星月夜



昨日は新月だった。満月、下弦と、月がだんだんやせていくと、天気が気になってくる。星が見たいのだ。しかし、ここ数ヶ月は雨季で、空がきれいに晴れることはほとんどなかった。本当ならもう雨季が終わり、乾季に入っていてもいい頃なのだが、今年は未だに雨が時々降る。一昨日も降った。空には常に雲があり、せっかく月のない日でも、星がきれいに見られることはほとんどない。昨日は夕方、空がめずらしく晴れていた。これはいけるかもしれない、と思い期待に胸を膨らませ、サヌールのビーチに行った。

夜のサヌールビーチは、ほどほどに静かだ。もともとバリの観光スポットの中でも、サヌールは年齢層が高い。退職をしてサヌールに落ち着く外国人も多く、静かで安全なのがサヌールの魅力だ。ビーチ沿いの道には高級レストランが並び、雰囲気のある照明の中で静かに夜を楽しむ観光客がちらほら。暗がりで目を凝らせば、海を見ながら寄り添うカップルの姿がところどころにある。そんなわけで、人がいなくて怖いということは全くない。時にはレストランでライブ演奏をしていることもあるが、星空を見ながらのライブ演奏もまた一興。星空を乱す光害がないというわけではないが、真っ暗だったら却って怖いので、私のような初心者にはちょうどいい。

ビーチの砂は暖かく、柔らかくて、砂まみれになることさえ気にしなければ、最高のベッドだ。気温もちょうどで夜風が心地よい。砂の上に横たわり、夜空を見上げると、満天の空。昨日、私が行った時点では北のほうに雲が出ている程度で、あとはきれいに見えた。サヌールビーチは東に開けている。東には蠍座、南には南十字。今まではこれぐらいしかわからなかったが、先日iPhoneを買ったことで、強力な武器を手に入れた。星空アプリである。

私が入れたのは、Star Map 3Dというアプリで、現在地をGPSで把握し、そこから見えるはずの星図を見せてくれる。しかも、手の動きにそって、どの方向の、どの高度を見ているのかを察知し、星空にかざすことでそこにあるはずの星座を見せてくれるのだ。

しかも、実際に見える星座だけではない。地平線の下の星座や、日中、太陽に隠れて星が見えない時も空にかざせばそこにあるはずの星座を見せてくれる。月や惑星もだ。例えば今、太陽に向かってかざしてみると、太陽の後ろに黄道12星座のひとつ、牡牛座が見える。太陽は今、牡牛座にある。だから今生まれた人は牡牛座なのだ。また、南半球のバリで北極星が見えることはないが、北の地平から少し下に向ければ、決して見えるはずのない北極星を見せてくれる。地球が透明だったら見えるであろう星座を見せてくれるのだ。

この強力なアプリによって、昨日は星探しも随分はかどった。収穫はというと、蠍座の隣のへび使い座が初めてわかった。星座の形は知っていても、横になっていたりする場合、初心者にはなかなかわからづらいのだが、アプリのおかげで問題なし。へび使いの持っているへびの形も何となくわかった。うしかい座アルクトゥールス、乙女座スピカも確認。この2つの星は北斗七星さえわかれば、北斗の柄の曲線を伸ばしてすぐ見つけることができるのだが、こちらでは北斗の位置が低く、きれいに見えない。昨日は北斗の柄の3つの星だけしか見えなかったが、アプリなしではあれが北斗の一部だとは気づかなかっただろう。天秤座の位置も初めてわかった。(何が天秤なのかよくわからなかったが。)そして、蠍と南十字の間になにやら星座のように見えるいくつかの星を発見。あの辺りは天の川で星の密度が濃いのだが、それにしても何かの動物のように、しかも犬のように見えると思った。おおいぬ座もこいぬ座も別にあるので、犬のはずはないと思ったら、おおかみ座だった。なかなかいい勘してるじゃん、と我ながら思ったのだった。

ところで、日本とバリでは当然位置も違うので、星座の見え方も全然違う。東京は北緯35度、こちらは南緯8度ほどなので、43度も違うのだ。同じ星座でも、位置によって全然雰囲気が違って見える。例えば蠍座。日本では夏の南の空低くにしか見えないが、こちらでは天頂付近を堂々と横断する。さながら乾季の夜空の王者だ。冬にはオリオンの三ツ星が真上に見える。その代わり、日本の夏の夜空を彩る夏の星座たち、こと座、わし座、はくちょう座はかなり北のほうに追いやられてしまう。特にこと座は天の北極に近く、こちらで見ることは難しい。織女星が見られないのでは、こちらでは七夕を祝うことはできそうにない。

そして、日本では決して見られない南十字。日本では「南十字星」と呼ぶことが多いが、星座なので、実は正式には「南十字座」である。小さいが、どれも明るい星ばかりで、とても見つけやすい。いつだったか、「南半球なんだから南十字が見えるはず。出ていないかな・・・」と南の空を見上げたところ、あった。近くにあるにせ十字が多少紛らわしいが、それほどわかりやすい星座なのだ。日本からこちらに来る人には、是非見ていただきたい星座だ。

これから、乾季が始まる。海と空が澄む季節だ。新しく手に入れた星空アプリを手に、次の星見日和を待っている。

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