2014年6月5日木曜日

プラナリア(山本文緒)



乳がんで乳房摘出。離婚で働く意欲を失くした元・バリバリのキャリアウーマン。娘に馬鹿にされる平凡な主婦。彼氏となあなあで続いている彼女。離婚後、脱サラで小さな居酒屋を始めた男。

皆、挫折を経験し、エネルギーをなくし、輝いているとは言い難い5人の生活を描いた短編だ。どこにでもいそうな一般市民の等身大の物語。決してドラマチックではないし、感動することも、元気づけられることも、笑うこともないが、なんとなく共感できる、そんな話。

日常を書いた作品なので、直木賞をとったといっても、派手さはないし、素人目に素晴らしい作品、と感銘を受けることはない。しかし平凡だが、平凡ではっきりとした動きがないだけに、描きにくい心を、作者はよく描いている。ある意味、冴えない日常を描けるというのはそれだけ作家の力が問われるのかもしれない。
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