2014年6月18日水曜日

Lean In (Sheryl Sandberg)



GoogleCEOFacebookCOOなどを歴任し、Forbesの「最も影響力のある女性100人」の3位に選ばれた、シェリル・サンドバーグによる「女性と仕事」をテーマとした本。女性の社会進出の壁、仕事と家庭の両立というジレンマ、社会に深く根ざす女性らしさという固定的観念を自らのエピソード、他の女性リーダーの話、学術的研究などを交えて追究している。彼女ほどの最前線でなくても、女性ならば共感をもって読める話ばかりだ。

例えば、偽物症候群(Imposter Syndrome)。自らの昇進、成功を自分のものと認めることができず、周りの誰もが認める功績でさえも、「単に運がよかった」「周りに助けられたから」と卑下してしまう。そして、地位・責任と見合わない自分の無知・未経験がそのうち暴かれるのではないかと内心気が気ではない心境。私も自分に責任ある仕事が与えられるたびに感じてきたことは、多くの人、特に女性に共通することのだと初めて知った。

仕事と家庭、どちらかを選ばなくてはいけないのかというジレンマに、シェリル・サンドバーグは語る。家庭を持たずに仕事に邁進する女性より、理解ある配偶者を得た女性の方が多くリーダーとして活躍しているのだと。しかし、その理解ある配偶者がどれほどいるのだろう。婚活のアドバイス記事を見ると、どれも、「女性らしさ、やさしさをアピールするため、スカートをはきましょう」「化粧はきちんとしましょう」「家庭的なことをアピールしましょう。」結局、男性の求める女性像は何十年も前から変わっていないことがわかる。仕事に理解ある配偶者を得たくても、家庭的であることをアピールしなくてはいけないというのは何という矛盾なのだろう。

そして、人の上に立ちたいという女性は、異性からだけではなく、同性からも嫌われるという悲しい現実。この本だけではなく、女性の上司に対しては、男性よりも女性の方が見る目が厳しいとか、男性よりも女性の方が取引相手の男性を取引相手が女性だった場合に比べて能力を高く評価する傾向にあるとか、私も聞いたことがある。女性の敵は女性だというのは、何と悲しいことだろう。男性がリーダーシップを発揮すると「頼もしい」、女性が同じことをすると、「仕切りたがり」となる。女性は前に出れば出るほど煙たがられる。また、主婦は仕事をしていない後ろめたさがあり、仕事をもつ女性は家事や育児を妥協しているという後ろめたさがある。その後ろめたさから、女性同士が互いの価値観を批判し合う。男尊女卑を嘆きながら、その文化に加担しているのも女性なのだ。

女子会があると、たまに職場における女性の話が出る。しかし、実際に職場で声を上げる女性は希だ。「それ、ちゃんと言った?声をあげなきゃ何にも変わらないよ。」一度、友人に言ったことがある。「だって、しょうがないよ。社会がそういうふうになっているんだから。」それでおしまい。上司の心証を悪くしたくなかったり、「頭が固い」「協調性がない」と思われることを恐れているのだろう。勇気をもって声をあげれば、たちまち同性からも冷笑の対象になりかねない。もちろん、その気持ちはよくわかる。でも、そうすることで、現状を黙認し、好ましくないその文化を承認することに貢献しているとは気づかないのだろう。

女性の選択肢が増えた今でさえ、職場における性差は話題にしにくい。男性一般を糾弾しているようにも取られかねず、一瞬にして敵を作ってしまう。客観的に話し合うことがいかに難しいことか。だからこそ、勇気をもって声をあげたシェリル・サンドバーグを賞賛したい。こういう女性がいるからこそ、今の女性の地位がある。そして、それを享受するだけではなく、さらに向上させるために、私たち一人ひとりが意識して、まわりを変えていかなければならなのだ。
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