2013年5月16日木曜日

ダンス・ダンス・ダンス(村上春樹)



海外で「日本の小説が好き」という人がいると、それが意味する日本の作家は限られている。欧米では大体、村上春樹だ。ある意味、海外では現代日本作家の代表ともなっているかもしれない。

村上春樹の小説は何作か読んでいるが、いつもこの人の作品は抽象画のようだと思う。何が描かれているのだかわからないが、独自の世界がある。そして何故か惹きつけるものがある。しかし、意味はよくわからない。だから、この人の作品は好き嫌いがはっきり分かれる。残念ながら、私は後者のほうだ。「ねじまき鳥クロニクル」「羊をめぐる冒険」「ノルウェイの森」など代表作を読んできたが、どれも面白く、読んでいて引き込まれる。しかし、最後まで読んでもしっくり来ない。だから何が言いたかったの、と思ってしまう。村上春樹の作品を読んだのは久しぶりだが、これもそんな本だった。

位置づけからすると、「羊をめぐる冒険」のその後の話ということになる。羊男も出てくるし、「羊をめぐる冒険」の中のエピソードがこちらにも登場する。しかし、私が「羊をめぐる冒険」を読んだのは10年以上前で、記憶もおぼろげだった。それでもストーリーをたどる分には支障はなかったが、それでも結局、何が言いたいのだかわからなかった。ミステリー、というにしては謎解き以外の部分が多すぎるし、結局主人公が自分を取り戻すための経過だったのかと思うが、それもしっくりこない。どっちつかずで、ユニークで魅力的な登場人物たちが話を楽しませてくれるのだが、だからどうなの、という感じもする。村上春樹には熱狂的ファンが多いが、ファンの方々は理解できるのだろうか。

抽象画は意味不明だから抽象画なのかもしれない。しかし、この作者ほど友人と意味を話し合ってみたくなる作品を書く作家もいないかもしれない。だって、もしかして自分だけわからないのかと思うと、くやしいから。

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