2013年5月24日金曜日

マレーシアのボルネオとインドネシアのカリマンタン



現在、仕事でマレーシア、ボルネオ島の北西、コタ・キナバルに来ている。ちなみに、ボルネオ島は東側と南側はインドネシア領になっており、インドネシアではカリマンタン島と呼ばれている。1つだけど2つの名前をもつ島なのだ。今私がマレーシア側にいるため、ここではボルネオと呼ぶことにしよう。

地続きで、マレーシアとインドネシアという2つの国に分かれたのは歴史的にはごく最近だから、もともと、現在のマレーシア側とインドネシア側にそんなに違いはなかったはずだ。事実、先住民の文化は共通だし、国境の向こうに親戚をもつ先住民も少なくない。昔は山の向こうに嫁に行った、という感覚だったのだろう。しかし、植民地時代を経て、別の国に分断された現在ではその差ははっきりしている。まず、経済的には、マレーシア側(サバ、サラワク州)のほうが圧倒的に近代化されている。マレーシアの経済成長をそのまま反映した形だ。マレーシア側では道路も、街中はもちろん、かなり奥のほうまできれいに舗装されている。インドネシア側では市街地の道路さえ穴ぼこだらけだ。これは、この島に限ったことではない。ジャワやスマトラでも、かなりの密度で人が住んでいる地域でさえ、舗装されていないか、管理が悪く、穴ぼこだらけのひどい状態になっている道が多い。

ボルネオは東南アジアでは熱帯雨林の原生林が生い茂る島として、さかんに宣伝されている。私が現在いるコタ・キナバルも、エコツーリズムの中心地となっており、パダス川のカヤッキング(筏下り)や世界有数のダイビングスポットへのダイビング・ツアーなど、数々のツアーでにぎわっている。そして、ここの何よりの目玉は、街の名前にもなっている、東南アジアの最高峰、キナバル山だ。4000メートルを超える山で、2日かけて登るのだが、登山客用に道が整備され、山の上にホテルもあるため、初心者でも比較的簡単に登れるという。このホテル、かなりきれいに整備されているらしく、昔ながらの山小屋のようなものではない。予約がいつもいっぱいなので3ヶ月前には予約しないと登れないという繁盛ぶりだ。

実は、このキナバル山、私の憧れの山でもある。昔、小学校の担任にマレーシアでの登山の話を聞いてから、私もいつか登ってみたいと思っていた。しかし、登山は1人ではつまらない。他に登山者はたくさんいるし、ポーターもいるだろうから1人でも危険は少ないだろうが、やはりできれば気の合う友達と登りたいものだ。しかし一緒にこの4000メートル級の山を登ろうと言ってくれる酔狂な友人は見つからず、目下登山友達募集中だ。あまり年をとる前に実現したいものだ。

雄大な自然を売り物にエコツーリズムで繁盛するマレーシアとは反対に、同じ島でもインドネシア側でのエコツーリズムはあまり聞いたことがない。観光客用に設備が整えられていないし、宣伝もされていない。また、昔イギリスの植民地だったおかげで英語が達者なマレーシアに比べて、インドネシアでは英語が話せる人は少なく、観光業を支える人材の確保も難しいのかもしれない。

しかし、観光化がされておらず、一般人が訪ねるのはかなり難しいが、手つかずの雄大な自然、先住民の文化が残されているのはむしろインドネシアかもしれない。このボルネオ島サバ州で最も奥地にあるという村を訪ねたことがある。しかし、その村は、エコツーリズム推進プロジェクトで開発され、今では村でWiFiが使えるまでとなっている。各家庭にはテレビがあり、皆、当たり前のように携帯電話を持っている。むしろ、街に近い村のほうが開発から取り残されてしまった感じだ。しかも、村人はだいぶ昔に皆キリスト教徒になってしまったため、先住民が守ってきた伝統、文化の多くは既に失われてしまっている。先祖が守っていた森の中の聖地などは観光客に見せるために保存しているのみである。

一方、インドネシアの熱帯雨林の伐採地で出会った現地の人々は未だに独自の文化を持っていた。もちろん、彼らの生活もだいぶ現代化している。バイクを乗り回し、テレビなどに親しむところは同じだ。しかし、彼らが働く伐採キャンプには独特な木琴やギターのような楽器があった。私がそれに興味を示すと、全部自分たちで作ったのだと言い、楽器を手に合奏を始めてくれた。かなりの腕前だ。そして作業着のまま、その音楽に合わせて踊りだす人もいた。ランダムな踊りではなく、伝統的な振り付けの踊りである。そして、何度も海外に招かれて公演した事もあるのだと誇らしげに語るのだった。今ではアブラヤシのプランテーションによる開発などで森林も脅かされ、彼らの生活も変化を余儀なくされているが、それでもマレーシア側よりはまだ伝統的文化が残されているような気がする。

しかしグローバル化が進む現在、「手付かず」のものを求めるのは難しい。しかし、ボルネオの雄大な自然を手軽に楽しみたいのなら、マレーシアが断然お勧めだ。多少観光化され過ぎている感は否めないが、サバ州のコタ・キナバルやサラワク州のクチンは街自体楽しめるし、日帰りでいけるエコ・アトラクションが数多くある。しかし、もっとワイルドなものを期待するのなら、インドネシア側だろう。ただし、望むような旅を手配してくれるところはないので、何もかも自分でやることになりそうだが。


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