2013年9月21日土曜日

孤宿の人(宮部みゆき)



今しがたこの本を読み終え、切ない、やるせない思いでいっぱいだ。久々に読んだ宮部みゆきの時代物だったが、この話はこれまで読んだどの宮部みゆきの話よりも悲しく、暗かった。

加賀殿という疫病神が江戸から流されてくる。その不安と恐怖が現実の災害を招いてゆく。人の世のしがらみと守るべき建前に、自分の思いを抑えなくてはいけず苦しむ人々。その中で描かれる、少々知恵遅れの孤児ほうと、ほうに手を差し伸べる人々の、あたたかな魂の交流がこの物語の中の光だ。ほうが打算もなく、自分では何もできない無垢な子供だからこそ、周りの人はその存在に癒され、救われたのだろう。自らを鬼とし、現世での全ての望みを捨てた加賀様でさえも。宮部みゆきは、こういう人の心のあたたかさを描くのが本当にうまいな、と思う。しかし、健気に生きるほうを残し、ほうを助けてくれた人は次々に死んでゆく。ほうの無邪気さがその悲劇を際立たせ、最後は涙なしでは読めなかった。

しかし、個人的意見を言わせてもらえば、いくら何でも人が死にすぎだと思った。登場人物全滅かと思うほどだ。もちろん、物語の構成上、不可欠だった死もあった。しかし、そうでない死も多かった気がする。大体、いくら雷がひどいといっても、そんなにたくさん雷でやられるなんて非現実的だ。私としてはラストが全然納得がいかない。せめて宇佐さえ生かせておいてくれたなら、この悲しい話の中にももう少し希望がもてたのに。
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