2014年3月13日木曜日

海賊とよばれた男(百田尚樹)



痛快としか言いようがない。言わずと知れた2013年本屋大賞受賞作である。出光興産を一代にして築き上げた出光佐三をモデルとした(というかそのまま)の血湧き肉踊る立志伝だった。

目先の儲けにこだわらず、国や時代に必要なこと、人のためになることを見つめ、実行した破天荒な男の生涯。しかし、「正しいこと」を有言実行するのには様々な困難と試練が伴う。突き当たる壁に怯むことなく果敢に挑戦し、突き破り、時代を作ってきた男の生涯は痛快だった。

企業の創業者といえば、ユニークな人物が多く、その人生はどれも波乱万丈だ。しかし、日本の代表的な経営者として大抵の日本人が思いつくのは松下幸之助、盛田昭夫、本田宗一郎などで、出光興業の創業者、出光佐三を思い浮かべる人はまずいなかっただろう。この本が出るまでは。

忘れ去られようとする歴史の中で、こんな日本人がいるということを教えてくれた作者にまずは感謝したい。人間やればできるんだ、そういう希望や勇気を持たせてくれる本を読めたことがうれしい。多少の脚色や物語を語る上でのご都合主義があったとしても。

それにしても、百田尚樹の作品はどれも単純明快だ。物語を流れるテーマやメッセージ、作者が書きたいと思ったものがはっきりしている。人によっては、訴えたいものがあまりにも見え透いていて白けてしまうかもしれない。しかし、私は読者に訴えたいものがそれほどまでにある作家の存在を頼もしく思う。特に、ちょうど転機を迎えている私にとっては、この作品はまたとない声援のように感じた。


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

0 件のコメント:

コメントを投稿