家族の情景を描く第一人者、重松清の珠玉の短編集。相性がいいのか、今まで読んだ中で重松清の本にはずれはなかったが、この短編集も秀逸だった。
テーマは「卒業」だが、必ずしも学校からの卒業ではない。死という人生の卒業、今まで囚われていたものからの卒業、新たな出発という意味での卒業である。そして、4つの作品にはどれも、肉親の死が描かれている。
私が特に気に入ったのは、第4話の「追伸」だ。母をがんで失った少年と、継母の確執。不器用ながらも近づこうとする継母と拒絶し続ける少年。少年は青年になり、大人になっても、継母の存在を否定し続ける。そこにカツを入れる入れる妻が格好いい。最後の、「お母ちゃん」という呼びかけには、ありきたりの結末ながらも、味がある。
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