2014年7月23日水曜日

神去なあなあ日常(三浦しをん)



林業がテーマの映画ができたらしい。しかも原作が三浦しをんらしいと聞いて読んでみたこの本。林業というマイナーなテーマをここまで親しみ易く、魅力的に面白く描いてくれた本はないのではないか、と思う。

何の進路も考えないまま、高校を卒業したちゃらんぽらん男子は、両親と担任の陰謀により山の中に林業研修員として放り込まれる。そこで、ゼロから林業を学び、村の文化に触れ、たくましく成長してゆく。人間離れした野生児やクールな美女、ユニークな村の人々に囲まれながら・・・。

特別なドラマがあるわけではない。しかし、日本古来の自然とそれによって育まれた文化がここには描かれている。神隠しや山の神といった超常的なものも、この山の中では不思議ではない。むしろ、科学的なものしか信じられない人間が、狭量でちっぽけに思えてしまう世界。現代人が忘れている、そしてこの人口減少の日本でなくなりつつあるそんな世界が生き生きと描かれていた。文体もちゃらんぽらん男子の日々の記録という形なので、読みやすいといえば、読みやすい。文学的な格調の高さは皆無だが。

普段は注目されることのない林業という世界を紹介してくれただけで、貴重な小説と言わなければならない。

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