2013年6月1日土曜日

日本人と中国人



北京での出張から帰ってきた。先月も中国に行ったばかりで、しかも7月にも出張の予定があるから、本当に頻繁に足を運ぶことになる。急速に経済を発展させている中国。経済でも領土問題でも日本とは何かと摩擦を引き起こすことが多くなり、ともすれば文化比較でも、否定的な側面に注意が行きがちだが、今回の出張では、なかなか中国人から学ぶ点が多かった。

大学時代中国語を学び、中国人をルームメートにもち、3ヶ月北京に留学した私にとって中国の文化や日本との差は別に目新しいことではない。しかし先月と今月中国で研修に参加した際、参加していた中国人の態度から改めて感じたことがあったので、ぜひここで紹介しておきたい。

中国人は日本人と比べて圧倒的に雄弁だ。会議で質問や発言するのに躊躇しない。積極的に議論に参加し、自分の意見を堂々と述べる。この意味では中国人は、日本人と比べて余程欧米的かもしれない。

それに対して日本人は(私も含めて)、とにかく話すのが下手だ。国際会議での有能な議長とは、日本人を喋らせ、インド人を黙らせる者だというジョークがあるくらいで、日本人は自分の意見を言うのにとかく躊躇する。不言実行や他者との調和が美徳とされる価値観からだろうか、変なことを言って恥をかいたり、煙たがられるのを恐れて、結局何も言えなくなってしまう人が多いのではないだろうか。これは、子供の頃からの刷り込みかもしれない。思えば、小学校、中学校、高校と上がるごとに、積極的に発言する生徒の数は減っていった。高校ともなると、授業で先生が質問をしても、当てられない限り誰も答えなくなる。間違えるのが怖くて、何も言わなくなってしまうのだ。

間違えるのが怖くて挑戦できないというのでは、改善、進歩の見込みはない。人間はみな、挑戦し、失敗しながら学んでゆくのだから。このメンタリティが一番よく表れるのが語学だと思う。語学は、話せば話すだけうまくなる。そして失敗を笑われながら学んでゆくのだ。文法の間違いを恐れて話さないのでは上達の見込みはない。日中韓3カ国の学生の英語能力の比較で、日本が最低だという記事を読んだことがあるが、さもありなん、である。アメリカの大学院に入学した際、多くの国からの留学生と交わったが、中国・台湾の学生は、国を出たのは初めて、という学生でさえもかなり英語が流暢で感心した。(韓国人はあまり数がいなかったので比較できない。)それと比べ、日本ではトップレベルの大学の学生でさえもろくに英語が話せなかったりするので残念だ。

先日の研修は英語で行われ、あまり英語が達者でない人も多かったにも関わらず、皆、拙い英語でも一生懸命自分の意見を述べ、わからないところは積極的に質問していた。日本人だったら何も喋らず、自分の英語の拙さを恥じて沈黙する人が多いのではないだろうか。中国人のチャレンジ精神を見習いたいものだ。

中国人は積極的に議論に参加してくれるので、セミナーや研修を主催するほうにとっては、手ごたえがあるだろう。ジョークを言えば笑ってくれるし、質問も飛び交う。ただし、欠点としては、もし主催者が議論を制御することに長けていなかった場合、議論がとんだ方向に行き、とんだ時間を食ってしまうことにもなりかねない。事実、中国人同士が中国語で議論を始めてしまい、教える側が置いてけぼりになった場面も何回かあった。一方、日本で同じセミナーや研修を開催しても、観客からの反応は薄く、手ごたえはないかもしれないが、参加者からのとんだ質問に悩まされたり、執拗な発言で時間をとられることは少ないだろう。そして、発表の出来がどうであれ、最後には温かい拍手をもらえるだろう。ただし、ジョークを言って白けるのは覚悟したほうがいいかもしれない。

この日中の文化差、価値観や文化という面ではもちろん、どちらがいいということはない。ただし、これが国際競争の場となると全く話は別物だ。ビジネス界、そして国際政治の場、あらゆる場面で発言力がものを言う。そこでは沈黙は金、謙虚が美徳だのと言っている場合ではないのだ。雄弁な発言で圧倒したほうが勝ちだ。日本人も自己の価値観に固執することなく、国際社会では柔軟に、中国人の積極性、自己主張の強さを見習いたいものだ。

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