2013年6月2日日曜日

北京植物園と世界の植物園批評



先週、中国の北京に行ったが、中国ではFacebookや、Google系列のブロガーが見られない。そのため、先週書きたくても書けなかったことを今書くことにする。

日曜日半日自由時間があったので、北京北西郊外にある北京植物園を訪ねた。私が泊まっていたホテルがその近く(かなり不便なところ)にあったため、時間があったら行ってみようと思っていたのだった。世界の各地を訪ねている旅行好きでも、わざわざ限られた時間でその土地の植物園に行くという酔狂な人間は少ないかもしれない。植物なんて、興味がある人でないと面白くない。家族連れならまず、植物園よりも動物園を選ぶ。しかし、私は大学で植物を勉強したため、世界各地の植物園をまわって密かに批評するのが楽しいのだ。今まで訪ねたことのある植物園は、ニューヨーク植物園、東京の小石川植物園、自然教育植物園、インドネシアのボゴール植物園、バリのブドゥグル植物園、シンガポール植物園、スリランカのペラデニア植物園、そして北京植物園だ。

北京植物園では薔薇が真っ盛りだった。1ヘクタールほどのローズ・ガーデンには色とりどりの薔薇が咲き乱れ、目にも鮮やかな光景だった。また、植物園に限らず、この季節、薔薇は北京の至るところで楽しめるようだった。市内の多くの道路の中央線の柵には薔薇が絡められており、車の中からでも楽しめるのだ。北京は道路が広いから、中央線にも植物を植える余裕がある。狭い東京の道路ではそんな余裕もないのが残念だ。

 
満開の北京植物園のローズガーデン。
いい香りがたちこめていた。

しかし、全体的な感想を言えば、標本として各地からの植物を展示しただけの植物園の域を出ないな、と思った。もちろん、それも植物園の意味なのだが、私は植物園には、標本としての植物を集めただけのものよりも、いろいろな生態系を再現したような、自然景観の美を求めたい。例えば東京の自然教育植物園。武蔵野の雑木林や湿地の生態系が小さいながらも再現されている。景観美なら、ニューヨーク植物園の森林を走る遊歩道に敵うものはないだろう。植物園というより森林公園で、自然の森を歩きながら、渓流の清けさを楽しむことができる。秋の黄葉も圧巻だ。ニューヨーク植物園は展示もすごいが、やはり私が好きなのは、森林公園としての美しさだろう。温帯の植物園の中では、ニューヨーク植物園が一番好きだった。

熱帯の植物園には、温帯にはないパワーと多様性がある。シンガポール植物園はとても立派だが、あまりにもきれいにデザインされすぎている気がする。全体的に人工的なイメージで、自然が好きな私としてはあまり好みではなかったのだが、それでも蘭園には圧倒された。あらゆる色と形の蘭がかなりのスペースに隙間なく飾られ、人口の美にしても、あれ以上の蘭園は世界でもないのではないかと思う。インドネシアが誇るボゴール植物園もすごい。ジャカルタから2時間ほどの都市、ボゴールは雨がひっきりなしに降る都市で、おかげで植物がよく育つ。ボゴール植物園は東南アジア一とも言われる規模で、さすが熱帯、多様性や木の大きさも温帯の比ではない。植物について何も知らない一般人でも、見たこともない木々の数々とその大きさだけでも普通に圧倒されるに違いない。

しかし、今まで訪ねた植物園の中で最も私の印象に残っているのは、スリランカの古都、キャンディにあるペラデニヤ植物園である。これは、もともとそんなに期待していなかっただけに、予想をはるかに上回る規模、質に感激した。横に大きく広がる「この木なんの木」や、生き生きと生える神木級の大きな木は圧巻だった。何よりも印象的だったのが、なんの秩序もなく曲がりくねって成長するヤシの並木だ。ヤシはどんな種類でもまっすぐ空に向かって伸びるものだという私の中の常識を覆された。この植物園に隣接する、スリランカ屈指の大学、ペラデニヤ大学のキャンパスを少しばかり案内してもらったのだが、まるで植物園の中に大学の建物がところどころあるようだった。荘厳としかいいようのない大木がキャンパスのそこら中に生えており、それに感激して今すぐ転校したいと思ってしまった私である。

まだ訪ねてない植物園で、是非行ってみたいのは、ロンドンのキュー王立植物園。古い歴史を誇る、ユネスコの世界遺産だ。正直言って同じロンドンの観光名所、ビッグ・ベンや大英博物館などよりもこちらのほうが余程興味があるのだが、やはり私の趣味はかなり変っているのだろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿