精神的に疲れていて、癒し系の話を求めていた。エンターテイメントとしては刺激がなくても、読んだ後に、ちょっと心が温かくなるような話が読みたかった。例えば、小川洋子「博士の愛した数式」や、北村薫「空飛ぶ馬」、瀬尾まいこ「卵の緒」のような。そんな時に手をとったこの本。まさにドンピシャの大当たりだった。
これは、実在する阪急今津線を舞台にした、通りすがりの人々の話だ。短編小説のオムニバスのようでいて、ひとつひとつが繋がっている。
初々しい恋の始まり。裏切られた恋と復讐。通りすがりの人にかけられた、目を覚まされる言葉、励まされる言葉。ひとつひとつの話には駅名が題名としてつき、主人公もいる。しかし、その主人公の物語に、別の話の主人公が脇役として登場し、物語を変えてゆく。
ローカル線における「袖摺りあうも他生の縁」を描いたような、この本。人にはひとりひとり、その人の物語があるのだということを教えてくれる。私は、どれだけの人の「物語」に脇役として登場し、傷つけたり、励ましたりしたのだろう。私の「物語」のなかで、大切な言葉をくれた人がいたように。
心が弱っている時におすすめしたい、ちょっと素敵な本だった。
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