2014年2月17日月曜日

海街diary(吉田秋生)



このブログで漫画の書評を書くのは初めてとなる。しかし、私はもともと無類の漫画好きだ。日本史、世界史、世界の著名人の伝記、百人一首などの教育的なものはすべて漫画から学んだ。少女時代はりぼん、花とゆめ、LaLaなどの少女マンガ誌の読者であり、中高時代はろくに本も読まず、専ら漫画を読んでいた。中学・高校で先生に没収された漫画の数は多分学年一ではなかっただろうか。(自慢にならない・・・)

しかし、高校卒業後、留学したあたりから漫画から遠ざかってしまった。海外では漫画が手に入りにくく、また、高い。本と漫画では、一冊あたりは本のほうが高くても、楽しめる時間を考えると、漫画のほうが断然高くなる。かさ張る漫画を持っていくのは効率悪く、楽しみにしていた連載ものも、1年に1回帰国したときに読める程度になり、自然と漫画からは遠ざかってしまった。数年前に「のだめカンタービレ」にはまったのを最後に、今では何が流行っているかさえわからなくなっている。

今回、母の手術で日本に帰国した際、再び漫画とめぐり合った。母の付き添いで行った検査所の待合室では、10年ぶりに「るろうに剣心」にお目にかかった。懐かしい。短い時間しかいない待合室では、やはり短い時間で楽しめる本よりも漫画のほうがいいのだろう。この漫画、「海街diary」に出会ったのも病棟の待合室だった。

鎌倉に暮らす姉妹と、新たに加わった異母妹の話。家庭環境が複雑で、姉妹は過去に両親に棄てられているし、家を出た三姉妹の父と新しい女との間にできた異母妹も、両親に死に分かれている。しかし物語はそんな悲劇的な過去に焦点を当てるのではなく、現在を生きていく4姉妹の生活、恋、成長を描いていく。

どこかに、「絵で描く文学」と書いてあったが、まさにそんな感じだ。ヒット漫画によくある、血湧き肉踊る冒険譚ではなく、普通の人々の何気ない日常の中にある静かな物語。人の生死や縁という不思議なもの、人生の悲劇も人生の一場面として当たり前に描かれている。やさしく温かい絵柄と、美しい古都鎌倉の四季が何ともいえない詩情を醸し出している。

病院もなかなか気がきいているなと思う。病棟の待合室には、いくら面白くても、元気200%の冒険譚は必要ない。この話は、病に倒れ、または看病にくる人々の心によりそい、染み入るようなやさしくて、深い漫画だった。主人公のひとりである長女が看護師なので、病気や人の生死に関わる話も多い。作中に、真髄をつくような名言も多いが、それでいて説教くさくなく、奥が深い。

2013年のマンガ大賞を受賞したというこの作品。もうとうに世に知られている作品かもしれないが、めぐりあってよかったなと思える秀作だった。
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