2014年2月24日月曜日

空中ブランコ(奥田英朗)



「ガール」を読んでなんかいいな、と思い、「家日和」を読んでこの作家をもっと読みたいと思った。そして読んだ、奥田英朗の直木賞受賞作、「空中ブランコ」。しかしかなり期待していたせいか、少々微妙だった。

この作家で好きなのは、ユーモアがあることだ。一見したら悲劇と思えるものの中にも、おかしみを見出し、コミカルに表現する。そんな視点が好きで、これも読んだ。

精神科医、伊良部一郎のもとに訪れるユニークな患者たち。跳べなくなった空中ブランコのり、先端恐怖症のやくざ、コントロールを失ったプロ野球選手、書き始めた話を過去に書いたのではないかという強迫症に悩む恋愛小説家。

確かに、期待通りユーモアがあり、コミカルだ。読んでいて楽しいことは間違いない。しかし、それも5つも続くと多少うんざりする。ワンパターンなのだ。患者を診察する伊良部は無邪気な子供そのもので、理由をつけてはビタミン剤をうち、患者の職業を面白がって、好奇心をむきだしに自分もやってみる。失敗を恐れないデブ医者は空中ブランコをし、破壊衝動の代償行為と称して交通標識に面白おかしくいたずらする。悩む小説家をつかまえて、自分の書いた支離滅裂な話を本にしたいと編集者に掛け合う。その型破りの行動に、患者たちは馬鹿らしくなり、ある意味、癒されていくのだが、どれもそのパターンから出ないのだ。現実的でない主人公の、現実的でない話を面白いと思うのは、せいぜい12話までだ。本に納められた短編5話全てが同じだったので、少々がっかりした。

とはいえ、この作者のコミカルさは他の作家にはないいい味だと思う。しかし、友人にはむしろ、前に読んだ2作のほうを勧めるだろう。

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