2013年3月29日金曜日

ヤモリ地獄

バリにはヤモリが多い。どこの家にでも1匹や2匹、いや3匹4匹必ずいる。かなり立派なホテルに泊まって、壁にヤモリがへばりついているのにぎょっとする観光客も多いのではないかと思う。うちにももちろんいる。時々壁に糞らしきものをくっつけてさえいかなければ、虫も取ってくれることだし、なかなか可愛い同居人だと思っている。しかし、昨日うちに帰ってきたら、思わぬところにいた。

台所の流しの中に捕まっていた。私の気配を感じ、懸命に壁をよじ登って出ようとするのだが、出られない。8分くらいの高さまでたどり着いてはずり落ち、流しの底をさ迷っていた。さて、どうしたものか。料理をするのにも邪魔だし、かわいそうなので、助けてあげたい。しかし直接捕まえるのは避けたい。梯子のようなもので助けて上げられればいいのだが。

いろいろ考えた末、私は濡れ布巾を流しの淵にぺったりとかけた。これでしばらくすればヤモリも流しの壁面を登れるだろう、と思って観察しながら料理を始めたのだが、なかなか登ってくれない。それどころか、濡れ布巾と流しのわずかな隙間に身を隠してしまった。隠れてどうする!一生そこから抜け出せなくてもいいのかい!?

 しかし困った。私は麺をゆでていた。ゆであがったら熱湯を流しに流さなくてはならない。でもゆでヤモリは見たくない。麺がゆで上がるまでにヤモリには流しから出て行ってもらわねば。そこで考えた。どうしたらヤモリを流しから救い出せるか、と。

しかしなぜそもそもヤモリのくせに流しの壁面を登れないのか。いつも天井でも浴室の壁面でもはりついているではないか。そしてようやく気づいた。ヤモリが流しの壁面を登れないのは、流しの壁がぬるぬるしているからだ。だから登ろうとしてもずり落ちてしまうのだ。

というわけで、私はスポンジを取り出し、流しの掃除を始めた。ヤモリを傷つけたくはないので、洗剤は使わず、とりあえず擦るだけ。危機を感じ、ヤモリは私が擦る壁面とは反対のほうに逃げ、じたばたしている。その様子についつい笑ってしまう私。

ざっと壁面を水で磨いたところで、 とりあえず放っておくことにした。あとはヤモリ自身の努力あるのみ。果たして、数分後、麺がゆで上がる頃にはヤモリの姿は流しから消えていた。無事、壁面を登りきり、脱走できたらしい。私もゆでヤモリを見ずに済み、めでたしめでたしである。

それにしても流しに落ちたヤモリはあせっただろう。そこは一度入ったら抜け出せない、蟻地獄ならぬヤモリ地獄。しかしそんな罠を作ってしまったのはほかならぬ私だった。いつも流しをきれいでぴかぴかに磨いておけばヤモリもこんな目にあわなくて済んだであろうに。ヤモリさん、ご迷惑をおかけしました。これからはヤモリにやさしいきれいな流しを心がけます。




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