2013年3月30日土曜日

チヨ子(宮部みゆき)



幽霊などの超常現象を扱った短編4編を集めた短編集。宮部みゆきというだけで、ある程度質は保証されているので、安心して読める。どれもさらっと読めるので時間つぶしにはいいが、宮部みゆきには他に質の良い短編集もあるので、特別おすすめとも言えない。私としては、前に挙げた、「幻色江戸ごよみ」のほうが質もそろっていて、好きだった。

それでも、この短編集の中で気に入ったのは、本のタイトルにもなっている、「チヨ子」だろうか。アルバイトの女の子が着ぐるみの中に入って見れば、周りの人はみな、その人が子供の頃大切にしていたおもちゃのように見えてしまう―。これは、この本の中で唯一殺人事件が出てこない話だった。後味が一番いいのもこの作品だろう。最後の「聖痕」は、異色の作品だった。短編、というには多少長いが、なかなか考えさせられた。神とは、正義とは。この作品に描かれている狂気にぞっとした読者も少なくないだろう。

しかし、ちょっとした話の中に人間の怖さ、面白さ、悲しさを描けるのが宮部みゆきのベストセラー作家たる所以だろう。

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