この作風、いいな。それが感想だ。家をテーマとした短編集で、描かれている状況は決して明るくなくても、どこかコミカルでユーモアがあり、あたたかな気持ちが残る、そんな話。
例えば、会社が倒産し、失業した夫。妻がすぐに再就職することになり、主夫業を始める。普通なら惨めな身の上だが、ところがどっこい、思いがけず始めた主夫業がおもしろくてたまらない。目下、息子にブロッコリーを食べさせる作戦を嬉々として遂行中。
例えば、妻に逃げられた中年男。家具を取られ、空き部屋のようになった我が家をここぞとばかりに自分の趣味の作り変え、懐かしいCDの聞きたい放題、映画の見たい放題。やがてそこは家庭に居場所のない同僚の中年男たちのたまり場となる・・・。
何でもものは考えようだなあと思わせる短編の数々。何気ない家庭の風景に潜んだ、ちょっとしたあたたかさ。決して明るくないはずの場面に描かれる、おかしな明るさ。この作者の視点、切り口がたまらなくいい。もっとこの作者の本を読んでみたいと思った。
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