2013年2月11日月曜日

ライオンハート(恩田陸)


恩田陸の本を読んだのは「六番目の小夜子」、「夜のピクニック」に続いて、これが3冊目だった。また随分違った傾向のものを書くものだと思った。

これは、一応恋愛ものということになるのだろうか。しかし、普通のラブストーリーが描く、仲が進展していったり、すれ違ったりという男女の間の話は一切ない。ただ、時空を超えてつかの間出会い、別れるだけ。過去・未来・前世・現世・来世――全ての記憶は交錯し、いつから始まったのか、なぜそういう運命なのか、そしてなぜ一瞬しか会わない相手にそんなにも惹かれるのかもわからない。しかし男女はいくつもの違う時代をほんの一瞬会い、別れるために生きる。

だから何なんだ、と思う人もいるだろう。私もストーリーがあるような、ないようなこの話に多少消化不良の感は否めなかった。はっきりとしたストーリーラインの恋愛小説のほうが余程わかりやすい。しかし17世紀のロンドン、19世紀のシェルブール、20世紀のパナマ、ロンドン・・・普段あまり触れることのないそうした時代がひとつひとつ描かれていて、その中には歴史的事件を登場させているのも多い。それだけでも少し勉強したような気になるし、そうした時代に思いを馳せるのも悪くない。

特別面白いというわけではないが、独特の雰囲気をもった作品だった。おもしろい試みだったと思う。


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