2013年2月4日月曜日

今夜は眠れない(宮部みゆき)


やはり宮部みゆきは天才だと思う。こんなに温かく、しかしどこか切ない余韻のするミステリーはなかなかない。誰も傷つかないミステリー。平凡な一家族を巻き込んだ大騒動の裏には、巧妙なからくりと切なる思い、博打師の最後の賭けが隠されていた――。

ストーリーは予想もしない方向にどんどん展開していき、飽きさせない。しかし、単なる推理の論理や事件の仕掛けだけに凝ったミステリーではなく、この話では「人間」が生きている。人の心が、その思いがストーリーを動かしている。それが私がこの作品を好きな何よりの理由だ。

主人公の「僕」、緒方君も素直で可愛らしく、文章も、この年の男の子が書いたような形になっていて、ほほえましい。こんな風に自在に文章を操れ、作品独自の雰囲気を作り出すのもさすが宮部みゆき、お手のものだ。近頃の子供はもっとませてるような気がしないでもないが・・・。読後感が素晴らしい、おすすめの本。

0 件のコメント:

コメントを投稿