2013年2月5日火曜日

夜のピクニック(恩田陸)


○○賞というのはあてにならない、といいつつ、やはり賞を取った話題作品には興味が引かれる。この本を手に取ったのも、第2回本屋大賞に輝いた作品、ということからだった。

話の筋としては、いたって単純だ。全校生徒が夜を徹して80キロ歩きとおすという学校行事を題材に、ずっとわだかまりを持ち続けていた異母兄妹とその仲間の、何でもないようで、それでいてかけがえのない青春の1ページが描かれている。

奇抜な設定も、ドラマチックなストーリーの展開もなく、日常からかけ離れた事件が起こるわけでもない。青春小説定番の恋愛さえも、要素として使われている程度であって、全面には出てこない。あくまで登場人物は、どこにでもいるような、平凡な等身大の高校生であり、ストーリーも実際にあっても全然おかしくないようなものだ。

不自然に意識し合い、ずっと話さないでいた貴子と融は、歩行祭の終わり、いつの間にか普通に会話をするようになっている。
「――もっと、ちゃんと高校生やっとくんだったな」
「損した。青春しとけばよかった」
「ちゃんと青春してた高校生なんて、どのくらいいるのかなあ」
これは、青春を通過した大人たちの大多数がもつ感想ではないだろうか。え、青春ってこんなにあっけないものだったの、と。しかし、やはり振り返って思うのだ。ドラマチックな恋愛も、全てをかけた勝負もなくても、やはりあれが私の青春だったのだと。この本は、そんなありのままの青春を思い出させてくれる本だった。

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