2013年2月22日金曜日

Three Cups of Tea (Greg Mortenson and David Oliver Relin)


平凡な人間が一念発起し、困難を乗り越えながら、偉大なことを成し遂げる。使い古したテーマながら、そんな実在の話が私は大好きだ。エジソンや、ディズニー、スティーブ・ジョブズにしても、皆、七転八起の不屈の物語である。この話も、その例にもれない。平凡な登山家、グレッグ・モーテンソンがヒマラヤでの登山に失敗し、山間の貧しい村に助けられたところから物語りは始まる。モーテンソンはその村の人々の親切に感激し、必ず帰ってきて村に学校を建てることを誓うのだ。

しかし、生活の全てを山につぎ込んでいたモーテンソンには、資金がなかった。有名人に手紙を送ってみたり、ほとんど誰も来ない説明会を行ってみたりと、試行錯誤が始まる。プライベートの生活も、恋人と別れるなど、うまくいかない。やがて資金を出してくれるパトロンが見つかり、学校の建設が開始するが・・・。

今ではこの話が話題を呼び、広く支援者も現れ、モーテンソンは自身が設立したNPOの名前で、パキスタン、アフガニスタンの政情不安定な地域で学校を普及させているという。そうした地域では、貧困のせいで教育の機会が限られるばかりではなく、女子教育が禁じられ、男子にもイスラムの聖戦、ジハドだけを教えるところもある。アメリカが敵と見なされる地域で、アメリカ人、モーテンソンは教育により平和の種を撒こうとしている。
フェミニストの私としては、モーテンソンが女子教育に重点を置いているのが印象的だ。この本の中でモーテンソンは言っている。

「男の子に教育を与えると、村を出、仕事を探して街に出て行ってしまう。しかし女の子は家に残り、地域のリーダーとなり、自分が学んだことを伝えていく。本気で文化を変えたいのなら、女性に力を与えたいのなら、そして基本的な医療衛生を改善し、高い乳児死亡率をどうにかしたいのなら、答えは女の子を教育することだ。」と。

自分のためではなく、人のために心身惜しまず頑張る人がいる。そして、その結果がはっきりと出、少しずつだが世界がいい方向に変わってゆく。そんな話を聞くたびに人間も捨てたものではないと励まされるのだ。この話のなかで、モーテンソンが自分を理解し、応援してくれるパートナーとめぐり合い、家族を築くのもまた、いい。人のために働くだけではなく、自分も報われてよかったね、と安心した読者も少なくないだろう。

しかし、この本、どうやら後からケチがついたようで、紹介されている実際のモーテンソンの業績やタリバンによる誘拐などの内容の真偽をめぐって、物議がかもされたらしい。勿論、ノン・フィクションとして大々的に有名になった物語にフィクションが入ってたとすると興醒めだ。しかし、ゼロから始めて学校を作り始め(その実際の数についてはいろいろ議論がありそうだが)、世界中の注目を集めるまでになったというのは、やはり大した功績だと思う。

自分は何にも出来ない、何をしたって変わらない、そんな無気力に取り付かれている日本の若い世代に是非読んでほしい一冊だ。

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