2013年2月16日土曜日

砂の城(遠藤周作)


久しぶりに遠藤周作を読んでみた。遠藤周作は、海外の純文学に挑戦して大火傷し、以来本嫌い、特に文学嫌いになっていた私を読書の世界へと呼び戻してくれた、私の恩人だ。高校時代に課題で読んだ、「沈黙」、「深い川」。文学という敷居の高い分野からは予想もしなかった読みやすさで、本当の文学というのは、小難しいだけではなく、面白さも伴っているものなのだと、認識を新たにさせられた。

宗教色の濃い純文学作家だと思っていたが、この小説はそんなことはなかった。解説者のいう、「軽小説」、よくある、青春小説の1つだ。しかし、出版されたのが昭和54年ということで、やはり時代を感じさせるところが多かった。描かれている若者たちは、団塊の世代、私の両親の世代だろう。

まず、主役の3人がこてこての長崎弁をしゃべっている。それが自然なのかもしれないが、今の時代の青春小説で、コミカルなキャラクターでもない主役がこてこての方言をしゃべっていることはあまりないだろう。特に、才色兼備で真面目な主人公のお嬢様が方言だったら、読者も違和感を感じるのではないだろうか。それに、現代の青春小説で、大学生の女の子が友人に、「泰子にはわからんやろけど、恋って苦しかもんよ」というのは違和感がある。むしろ小中学生のませた女の子がいうような台詞ではないか。

ついついジェネレーション・ギャップの話になってしまったが、描かれているのは、どの時代も迷いながら精一杯に生きた青春の軌跡だ。過激派に入り、飛行機をハイジャックというのはやはり時代の違いを感じさせるが・・・。どんな時代も若者たちは道を模索し、自分の信じた道を生きていく。この小説に描かれている若者たちと同世代の、両親の青春に思いを馳せた。

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