2013年1月20日日曜日

卵の緒・7’s blood(瀬尾まいこ)


この作品には、包み込むような温かさがある。大衆に受けやすいドラマチックなストーリーや人が次々と死んでゆくミステリーとは対照的な、日常をつづった「癒し系」小説。この本に収録されている「卵の緒」、「7’s blood」の両方とも、家庭が舞台となっている。しかも両方とも少なからぬ不幸を過去に負ってきた、決して円満とはいえない家庭だ。しかし、それだからこそ、守っているささやかな幸福が心に染みる。血のつながっていない親子、いきなり2人暮らしをすることになった異母姉弟。そのふれあいの中に確かに存在する、絆。それは、誰もが思い描くような「円満家庭」の定義から外れた家庭の幸福だ。家族には、それぞれの形があっていい。いや、理想の姿を追い求めるより、自分らしい形を求めていくべきなのだと、そう思わせてくれる小説だった。この作者には、ご近所さんや親戚として、また友達として会ってもきっと好きになるだろう。きっと、人の心を感じられる、温かな人のだろうと思う。

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