2013年1月21日月曜日

冷静と情熱のあいだ(江国香織・辻仁成)


同じストーリーを別の作者が女性側・男性側から書く、意欲作。発想は面白いし、文章も舞台もきれいだが、全体として私にはいまいちだった。

まず、ストーリー展開がとても遅い。原稿を交換日記のように交わして書いたせいか、はじめのほうはなんとなく互いの出方を待っているようで、話がいっこうに進まない。そして、話自体も、互いに別々の道を歩みながら、過去の恋愛を忘れられないという設定なので、ひたすら後ろ向きで過去ばかり振り返り、それでいて2人が引きずっている過去もなかなか明らかにならない。キャラクターに魅力が感じられないというのも私が物語に入っていけなかった一因だろう。あおいにも順正も、思ってくれる恋人がいながら、現在と向き合おうとはしない。順正はそれでも修復士としての道を歩いているが、あおいについては、ひたすら本を読んでお風呂に入るだけ。やさしい恋人にも心は開かず、それでいて何をしたいというのでもなく、どっちつかずで、私は読んでいてひどくいらいらした。はじめRosso(赤)を読み、エンディングまでどっちつかずで、消化不良の気分だったが、Blu(青)を読み、少しだけ救われた。この後ろ向きな主人公たちは奇跡的な再会さえも後ろ向きに捉え無駄にしてしまうのかと思ったからだ。Bluのほうの最後で、ようやくこの物語にはなかった未来への希望が見えた気がする。

結論。ロマンチックな純愛ものなのかもしれないが、私の好みではない。私にはきっと、純愛ものよりも、当たって砕けてもまだ諦めないような不屈のラブストーリーのほうがあっている。

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