2013年1月20日日曜日

嫌われ松子の一生(山田宗樹)


映画化され話題を呼んだ作品の原作。映画では随分派手で明るい演出になっているらしいが(見ていない)、原作は、面白いが、かなり暗い。

最初は国立大学を出た中学の美人教師だったのが、校長からのセクハラ、窃盗事件で免職、後はソープ嬢、覚醒剤、殺人、と絵に描いたように転落してゆく。向けられたささやかな親切にすがりつき、愛を求めては、ろくでもない男に貢ぎ、裏切られる。誰でもいいから愛されたいというのも、地獄で仏(のように見えるもの)にすがりついてしまうのはわかるが、あまり同情できないのは私だけだろうか。

最初の転落のきっかけとなった事件にしたって、生徒をかばった、といえば聞こえはいいが、保身を第一に考え、単に口からでまかせを言ってしまった結果に他ならない。生徒のためを思った行動とはとても思えないのだ。その後の転落も、男運が悪いというよりも、男を見る目がないというのが原因の気がする。心配してくれる友達もいるのに、だめ男に貢いでしまって、結局だめになる。決して悪い人間ではないので、見ていて痛々しいが、結局は自業自得、といってしまえばそれまでだ。

松子は、悪い人間ではない。馬鹿でもない。しかし、弱い。自分で自分の人生を築こうという芯の強さがない。彼女の求める幸せはすべて男しだい、全て他人まかせなのだ。小さな希望にすがりついては裏切れ、それでも愛を求める姿は、哀れとは思うが、一方で、(こうはなりたくないな)と思ってしまうのも事実である。

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