2013年1月24日木曜日

古道具中野商店(川上弘美)


2ヶ月ほど前、「私の大好きな本フェア」という帯につられて、なんとなく手を伸ばしてみたこの本。しかしこの書評を書くにあたり、ほとんど内容を覚えてないことに気がついた。たいていの本ならば1,2年前に読んだ本であってもあらすじぐらいさっと出てくるのだが。つまり、それだけ印象の薄い本だったということだ。

しかし読み返してみれば、別に悪い話ではないのだ。いや、これは、話の流れよりも雰囲気を味わう本だ。小さな古道具屋を舞台にして、そこで働く「わたし」の日常と、「わたし」とタケオのどっちともつかない微妙な恋模様が淡々と描かれてゆく。登場人物はかなりユニークで、描かれている出来事もかなり非現実的なものもあるのだけれど、あたかも何でもないことのように過ぎ去ってゆく。この話で描かれている登場人物は、老若男女、みな恋をしている。性の話もしょっちゅう、日常の一コマとして出てくる。しかしそれも嫌らしい雰囲気ではなしに、この独特な世界を作り上げる一要素となっているのだ。若い日の不器用な恋、そのほろ苦い味を思い出させてくれる本だった。しかしはっきりとしたストーリー立てがあるわけではないので、また1週間も経てば忘れるだろうな、と思った。

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